医療法人制度の趣旨

医療法では、医療機関が医業の非営利性を損なうことなく法人格を取得することにより、

地域における医療の永続性を確保するとともに、
資金の集積を容易にし、
医療の普及向上を図ること

を目的として医療法人制度を設けています。

従来は、医療法人を設立するためには常勤の医師が3人以上必要でしたが、昭和60年12月の医療法改正により、1人以上の医師が常時勤務する診療所でも、医療法人を設立することができるようになりました。
いわゆる、「一人医療法人」といわれます。

この改正の趣旨は、
個人経営という一元的な経営を改善し、家計と医業経営を明確に分離することにより、

プライマリ・ケアという重要な役割を担う診療所の設備や機能の充実を図るとともに、
経営基盤を強化診療所経営の近代化・合理化を図ること

を目的としたものです。

平成19年4月施行の第5次医療法改正により、非営利性を強化する趣旨から、
従来の出資による「持分あり医療法人」の設立は認められず、
持分なし医療法人」として、医療法人運営に必要な資産を基金に拠出することになりました。

この「非営利性」とは、利益を出してはいけないということではなく、利益の配当をしてはいけないという意味です。

また、平成28年9月一部施行の第7次医療法改正により、
医療法人の理事の忠実義務や、任務懈怠時の損害賠償責任等が明確に規定されました。

以上のように、医療法人は、公益法人でも営利法人でもなく、いわば両者の中間的性格を持つ、医療法による特殊法人であるといえます。

医療法人を設立するには

医療法人を設立するには、都道府県の知事の「認可」を受ける必要があります。

では、「認可」と「許可」は何が違うのでしょうか?

「認可」とされている件については、主務官庁(都道府県知事)は、申請内容が認可基準を満たしていれば設立を認めなければなりません。つまり、法律上、主務官庁には認めるか否かについての自由裁量の権限を与えられていません。

よって、医療法人の設立認可申請があった場合は、医療法に規定された基準を満たしていれば、都道府県知事は必ず医療法人として認可しなければならないことになります。

これが、主務官庁の自由裁量をみとめている「許可」との違いです。

医療法人の業務と運営

医療法人の業務の範囲

医療法人は、開設している病院、診療所、介護老人保健施設及び介護医療院の業務(本来業務)に支障のない限り、法第42条に定める業務(附帯業務)を行うことができます。

ただし、この業務を行う場合は、定款(寄附行為)に定めなければなりません。

本来業務

  • 病院
  • 診療所
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院

附帯業務

厚生労働省より通知が出されている主な附帯業務は以下のとおりです。

  • 看護専門学校
  • リハビリテーション専門学校
  • メディカルフィットネス施設(有酸素運動施設)
  • クアハウス(温泉利用施設)
  • 薬局
  • 施術所(あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師、修道整復師)
  • 介護事業所
    訪問介護、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、介護予防訪問介護、介護予防通所介護、介護予防通所リハビリテーション、介護予防短期入所生活介護、介護予防短期入所療養介護、介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護、複合型サービス(小規模多機能型居宅介護及び訪問看護の組合せに限る。)、第一号訪問事業若しくは第一号通所事業又は障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律にいう障害福祉サービス事業

剰余金の配当禁止

医療法人は、出資又は寄附並びに拠出に対し配当を行うことは禁止されています。
事実上、配当とみなされるような行為も慎まなければなりません。

剰余金があるからといって、役員等に対して金銭の貸し付け等を行うことはできません。

以下、みなし配当とされる例です。

  • 役職員及び利害関係者等に対する貸付
  • (全役職員を対象とした規定を設けた福利厚生目的による場合を除く。)
  • 役員等が負担すべき債務の医療法人による肩代わり
  • 役員等特定の人のみが居住する社宅の所有又は賃貸
  • 役員等特定の人のみが使用する保養施設の所有等


医療法第54条の規定に違反して剰余金の配当をした場合
理事、監事、もしくは清算人は、
20万円以下の罰金に処せられます。(医療法第93条第7号)

税務上みとめられるからといって、上記のような配当類似行為をしてしまうと、罰金をうけてしまうので注意が必要です。

主務官庁による指導監督

医療法人は、主務官庁(都道府県知事)に、医療法人の経営を適正に保つために、以下のような手段で指導監督されることになります。

(1)報告・立入検査【法第63条】

 医療法人の業務若しくは会計が、法令に基づく知事の処分、定款(寄附行為)(以下「法令等」という。)に違反している疑いがあり、又はその運営が著しく適正を欠く疑いがあると認められるとき、報告、立ち入り検査を求められることがあります。

(2)改善等の命令・勧告【法第64条】

  •  医療法人の業務若しくは会計が、法令等に違反し、又はその運営が著しく適正を欠くと認めるときは、その法人に対し、期限を定めて必要な措置をとるよう命令されることがあります。
  •  法人が、命令に従わないときは、期限を定めて業務の一部又は全部の停止を命令されたり、役員の解任を勧告されたりします。

(3)設立認可の取消【法第65条・第66条】

  •  医療法人が、設立後1年以内又は全ての病院、診療所、介護老人保健施設及び介護医療院を休止若しくは廃止 した後1年以内に正当な理由がないのに、病院、診療所、介護老人保健施設及び介護医療院を開設しないとき又は再開しないときは、設立の認可を取り消されることがあります。
  •  医療法人が、法令の規定に違反し、又は法令に基づく知事の命令に違反した場合には、設立の認可を取り消されることがあります。